こんにちは!
管理栄養士の五十洲(いそす)です。
このブログでは、季節のお悩みや最近話題になっていることについて、栄養士の視点で、皆さまに役立つ情報をお届けしております。
10月に入りましたが、日中は暑い日が続いていますね。とはいえ朝晩は涼しく、秋を感じる今日この頃。。皆さまはどんな秋をお過ごしですか?緊急事態宣言も解除され、美味しい食事を楽しんでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今月はそんな食欲の秋にちなんで、美味しく食べること、健康的に食べることにまつわる内容を取り上げていきたいと思います!
今回は、食べ過ぎや早食いがもたらす老化への影響について。
食事の後、決まって強い眠気が襲ってくる…という方はいませんか?思い当たる方は、脳や血管、肌や髪まで老化しやすい状態になっているかもしれません。さらには将来の糖尿病リスクが高まっている可能性も…。
食べ方や栄養素に気をつけて、老化を食い止め健康的な未来を目指しましょう。
□食事の後、決まって眠気が襲ってくる
□大事な場面なのに眠気が我慢できない
思い当たることはありませんか…?
食後の眠気は少しくらいなら誰にでもあることで、あまり心配はいりません。しかし、我慢できないくらいの強い眠気を感じたり、それが頻繁に起こるような方は、気をつけた方が良いかもしれません…!
食後の眠気には、血糖値が関係しています。血糖値とはご存じの通り、血液中の糖(ブドウ糖)の量を表すもの。食事を摂ると血液中に糖が増え、血糖値が上がります。眠気がやってくるのはこの上がった血糖値が下がるとき。体の自然な反応で誰にでも起こることなのですが、例えば大事な会議中にも関わらずウトウトしてしまうなど、自分でもコントロールできないくらい眠くなってしまうとしたら、その時は血糖値が急激に下降して、いわゆる低血糖状態に陥っている可能性があります。
血糖値が急激に下降するのは、その前に血糖値が急激に上昇したときです。このように血糖値が乱高下することを血糖値スパイクといい、将来の糖尿病リスクを高める要因ともいわれているため、注意が必要です。
血糖値スパイクが起きる時、体の中では何が起きているのでしょうか?
私たちが食事から糖質を摂取すると、吸収された糖が血液へ取り込まれます。こうして血糖値が上がります。
私たちの体には、あらゆることを一定に保とうとする作用(恒常性)が備わっているため、血糖値を一定に保つために、上がった血糖値を下げるホルモンが分泌されます。このホルモンがインスリンです。
インスリンが糖を細胞内へ運び、糖はエネルギーとして利用されます。
食後に血糖値が急激に上がり過ぎると、それを下げるために大量のインスリンが分泌されます。インスリンが一生懸命に血糖値を下げようと働いた結果、今度は血糖値が下がり過ぎてしまうのです。これが低血糖の状態で、強い眠気や倦怠感、イライラなどを引き起こす原因となります。
血糖値の乱高下は、健康や美容に様々な影響を及ぼします。その影響とは…?
●脳や血管を老化させる
血糖値スパイクは、血管に負担をかけるやっかいな現象です。血糖値が上がると、血液の粘度が上がって、血管内を流れる際に血管壁に負荷をかけます。これが動脈硬化を進行させ、血管の老化を招きます。当然、脳の血管にも負担がかかるため、脳の老化にもつながります。
●肌のくすみやたるみを引き起こす
「糖化」という言葉を耳にしたことがあるかと思います。糖化とは、体を構成するタンパク質と糖が結びついて、タンパク質を変性させてしまうもの。パンやホットケーキを焼いた時にできる“コゲ”と同じ現象です。糖化は、体のあらゆるタンパク質を変性させ、老化を促進する要因の一つとされています。血糖値の急上昇が繰り返されると、正常に処理しきれなかった糖によって糖化が進みます。この糖化が目に見えてわかるのが、お肌のくすみやたるみ。甘いものや炭水化物が好きで、最近くすみやたるみが気になる…という方は糖化が進んでいるサインかもしれません。
様々な老化を引き起こす血糖値スパイクを予防するには、どんなことに気をつけたらよいのでしょうか…?
●早食い、どか食いは禁物!ゆっくりよく噛んで食べる
糖質は、タンパク質や脂質と異なり、口に入れた瞬間から消化が始まります。その分、吸収される状態(=ブドウ糖)にまで分解される速度が速く、短い時間で吸収されるのが特徴。これは、速やかにエネルギー源になるというメリットがある一方で、急いで食べれば食べるほど、血糖値はどんどん上昇してしまいます。この急激な上昇を防ぐには、ゆっくりとよく噛んで食べること。時間がない時はもちろんあると思いますが、可能な限りよく噛むことを意識して食事をしましょう。
●食べる順番に注意!いつでもベジタブルファーストを
急いで食べなければいけない場面でも、気をつけたいのは食べる順番です。最近はだいぶ浸透してきた方法だと思いますが、どんなにお腹が空いていても、最初にご飯に手をつけるのは絶対に禁物です。まずは野菜から食べ始め、肉や魚などのメインディッシュを食べて、最後にご飯などの炭水化物を口にします。そうすることで、血糖値の急上昇を抑えることができます。合言葉は「ベジタブルファースト」です!
血糖値スパイクを予防するための食べ方についてご紹介しましたが、栄養素の中にもそのサポートをできるものがあります。ここでは、3つご紹介します!
●水溶性食物繊維
こんぶ、わかめなどの海藻類や、里芋、こんにゃく、きのこ類などに含まれる食物繊維です。粘り気やとろみがあるのが特徴で、腸内をゆっくりと移動することで糖の吸収速度を遅らせ、血糖値の上昇を緩やかにする働きが期待できます。
●クロム
クロムはミネラルの一種です。インスリンと結合した糖が細胞内へ運び込まれる時に、ドアを開ける鍵のような役割をすることで、血中の糖の素早い処理を助けます。クロムは土壌や海洋など自然の環境中に広く存在するため、野菜や海藻、肉、魚介類など、幅広い食品に含まれます。バランスの取れた食事をしていれば欠乏することはありませんが、糖尿病患者など血糖値が高い人では、クロムが不足しているという報告がされています。気になる場合は意識して積極的に摂りたい栄養素です。
●亜鉛
亜鉛もミネラルの一種。インスリンを構成する成分の一つです。亜鉛が不足するとインスリンの分泌が遅れ、血糖値が上昇しやすくなるといわれています。亜鉛が豊富な食材はなんといっても牡蠣。他にも赤身の肉、レバー、うなぎなど、魚介類や動物性食品に比較的多くまれる栄養素です。野菜中心の食事をしていたり、お菓子を食事代わりにするような偏った食事をしていると不足しがち。亜鉛不足は血糖値上昇だけでなく、代謝や免疫力の低下にもつながるため、不足しないようにしっかりと補いましょう。
血糖値スパイクを予防するための食べ方と栄養素をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?通常の健康診断では空腹時の血糖値が測定されるため、食後血糖値の上昇についてはなかなか把握することができません。最初にお話ししたような食後の強い眠気に心当たりがある場合は、ご紹介したようなことを参考にしてみていただければと思います。
ちなみに、女性の場合は生理周期と連動して血糖値が乱高下しやすい時期があります。女性ホルモンのエストロゲンにインスリンの働きを高める作用があるため、エストロゲンが減少する排卵日後から月経前にかけてはインスリンの働きが弱くなり、血糖値の急上昇と急降下が起きやすくなるのです。生理前に食欲が旺盛になり、食べても食べてもお腹が空くという経験をしたことのある方は多いかと思います。そんな時期にもぜひ参考にしていただけたらと思います。
次回は、食欲の秋を満喫しつつ、太りにくい体をつくるためにおすすめの栄養素をご紹介する予定です。ぜひお楽しみに…♪
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